今週も今大会のゲスト 岩本能史さんより、参加されるランナーの

皆様へアドバイスをいただいています。

大会まであと10日。残された時間で出来ることが沢山ありそうです。

是非参考にしてください!

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こんにちは。ゲストランナーの岩本能史です。
さて、先週の峠走はいかがだったでしょうか?
しっかり月間走行距離の10分の1の峠走をこなした人、翌日は筋肉痛に

悩まされませんでしたか?

さらにその翌日、その筋肉痛が増大していて少し慌てたりしませんでしたか?
では木曜の今日、どうですか?すっかり峠走の筋肉痛は治っていませんか?
1週間前に半信半疑で「峠走のススメ」を読んでいたときと比べると見た目は

まったく同じ前ももですが、着地衝撃に対する耐性は格段にアップしたものに

なっていますよ。もしかするといつもは10km地点で訪れる「ハーフマラソン

の壁」が20km地点まで遠くに追いやることに成功しているかもしれません。

今、これを読まれている参加予定の皆さんは「やった!峠走成功!」と喜んで

いる人と、「あ~!実は峠走出来なかったんだよなぁ」とテンション下がり

気味の人がいることを私はしっかりと知っています(笑)。
でも大丈夫! 先週できなかった人、今週末に峠走、チャレンジしましょう!
月間走行距離の10分の1であれば、そのさらに1週後のレース本番に悪影響を

及ぼすことはありませんから安心して実施してみてください。

先週峠走をコンプリートできた人、今週末の秘密の練習法を伝授します。
今回は2日間のプロジェクトになります。
・土曜:長時間歩行
・日曜:5分間苦し走(←読み方は「くるしそう」です)

「ランニングレース前に歩く練習?」と疑問に思われた人も多いことでしょう。
ではそんな皆さんに今週も質問です。
次の3つの動作のうち、脚に最もダメージがあるのはどれ?
・直立60分
・歩行60分
・ラン60分
普通にランニングが生活習慣になっている人にとって、直立が最もダメージが大きく、                        次が歩行、驚くことに最もダメージが少ないのがランなのです。

直立は体重がそのまま脚にかかり、そのかかった重さ分が地球からも押し戻され、                          というエネルギーのせめぎ合いの中、立っているのです。
つまり地味に見えますが予想以上にダメージを伴うのです。
では最もラクと言われるランはなぜ立つより歩くよりラクなのでしょうか。
もし今、すぐに走れる状態の人がいたらぜひ試してもらいたいのですが、ももの外側に

手のひらを当てて軽く走ってみてください。
足が地面に着地するほんのわずか直前に手を当てているももの外側の筋肉が「キュッ」

と速く硬く収縮しませんでしたか?
少し難しいですが、これは膝や腰などの関節や筋肉自体などを守るための予備収縮と

言います。ボールが前から飛んできた時、無意識に目をつぶりますよね。後ろから

軽く押されたら無意識に片足が前に出ますよね?
人の身体は危険回避のために反射的に無意識の動きを取ることがあります。
ランニングにおいてはこの着地直前の予備収縮こそがそれにあたります。
実は皆さんが日々励んでいる練習の目的の多くはこの予備収縮を鍛えるためなのです。

予備収縮が「速く」「強い」ほど総力があると言われています。
先週の峠走も着地衝撃に強い脚を作るためのものでした。
峠走でより「速く」「強い」予備収縮を備えた、ひと回り優秀な脚を手に入れることが

出来たのです。

ただ、レース中は度重なる着地衝撃とエネルギーの枯渇によって「速く」「強い」予備

収縮がだんだん衰えてきます。
それこそが先週書いた、「ペースダウンしたい」「歩きたい」誘惑の根源の正体だったわけです。

話は戻ります。
「それでなぜ土曜に長時間歩行?」と皆さんは疑問に思われていることでしょう。
実は歩行は人体にとって非常に安全な移動方法です。着地衝撃もランより小さいし、

そもそも人間は本来、何時間も歩くことを想定していませんから。
つまり、危険が少ない運動ということがいえます。ということは危険回避のための

予備収縮は必要ないわけです。だからこそ歩くのです。
ランでは着地直前に起こっていた予備収縮が着地してから「あ!今着地したぞ」と

気づいて遅れて収縮が始まります。
これこそがランよりも歩行がつらい理由です。
レース1週前にあえて歩行で反射収縮のない着地を長時間行い、脚をダメージにさらします。
それこそが1週間後のレースに向けた強い脚作りとなるのです。

歩く時間の目安ですが、やはり月間走行距離÷10を目安に算出しましょう。
例えば月に合計80km走っているならば80分、つまり1時間20分一定ペースで歩き続けます。
せっかくですから時速6km以上はキープしたいところです。
10分で1km進めば時速6kmです。
早歩きよりさらに少し早い速度だと思ってください。
結構な疲労があるかと思います。
しかもその疲労は「こんなに長く走るの?」という身体からしてみたら想定外の時間です

から地味な重たいダメージが残ります。

そこで!翌日の日曜に行う「5分間苦し走」です。
予備収縮が伴わない長時間歩行を強いられた翌日の脚は鉛のように重たいはずです。
そこで5分間、はぁはぁ言うほどにもがいて苦しく追い込んで走りましょう。
走り出しは重たいと思います。1分後はもっと重たいと思います。

どんどんペースは落ちていきます。
それでも腕だけはしっかり振って重たい脚を引きづりながらでも5分間もがいてください。
目的は文字数の関係で省きますが、これが前日の長時間歩行の効果を倍増させ、さらに

1週間後に迫ったレース後半の「粘れる脚」になるのです。

この練習、もしも土日が難しいなら日月でも構いません。
ただし、練習終了後は良質なタンパク質(豆腐、ゆで卵、豆乳などがオススメ)を

たくさん摂って脚をいたわってあげましょう!